あたまがよくって、なんだって知ってる。
どの木にリスの巣があるのか、
なぜウサギは夜になって庭にでてるのかも。
ぼくは世界をぜんぶ知ってる。
ぼくの世界は大きな鉄のフェンスで囲まれてるけど。
ある朝、パン屋の配達がゲートを開いたまま帰ってしまったんだ。
ぼくは外へ出た、だってかしこいからね。
道路は車だらけ、
歩道は足早に歩くひと、ひと、ひと。
みみざわりな音ばかりはごめんだよ。
もっとほかの場所はないのかな。
知らない街をさまよううちに
おなかぺこぺこ、からだはくたくた。
なってこった、ぼく迷っちゃったんだ。



作:Marianne Richter
出版社:Children Press,Inc 1966
ページをめくるたびにため息。
なんて絵の達者な人なんだろう。
大胆な筆使いで描かれたスピッツやほかの犬も
すんばらしいのだが、
それ以上に街の描写が白眉。
少ない色数が構図の巧みさをよりひきたたてるなぁ。
夕景の雑踏の中、
こころぼそさでつぶれそうな気持ちのスピッツの姿なんて
胸にぐっと迫るものがある。
パン屋の配達の子に出会えてよかったね、スピッツ。
身の丈にあった暮らしがいちばん。

